1/24 SF読書会レポ②
それでは、休憩後から懇親会の様子まで、続きをどうぞ!
・ハードボイルドとしての見方
ハードボイルド=マーロウのような硬派なイメージ
マリードはあえて一匹狼を気取った、ちょっと情けないキャラクター。
でも、”タフな男が機能しない”という時代性を捉えた設定ではないか。
(なるほど!)
・SFとしては
作家エフィンジャーについて。
自身の健康問題やそれに伴う金銭的不安など、私人としては恵まれない一面もあった。
今回の「重力が衰えるとき」は1988年のヒューゴー賞にノミネートされるも、デヴィット・ブリン「知性化戦争」に敗北(それは仕方ない!名作の声多し)
つづく「太陽の炎」もヒューゴー賞にノミネート、ダン・シモンズ「ハイペリオン」に敗北(またしてもそれは仕方ない!の声)
結局、いつ作品が出ていたとしても次点、というのが本作の評価なのでは・・・という意見にごめんよエフィンジャーとほろ苦い気持ちに。
でも、なんとなく報われないところがファン心をくすぐる、愛される作家だねという結論に至りました。
このとき、サイバーパンクが下火になった話も登場。「ハードワイアード」(ウォルター・ジョン・ウィリアムズ)を復刊してくれ!という切ない叫びが西荻窪に響いたという・・・。
ちなみに、今回の読書会開催にあたって、版元H書房さまにQ&Aをお願いしたところ、幹事の想像を超えた素晴らしいお返事をいただきました。
とくにお伝えしたいのが、ずばり”この次におすすめの本はなーに?”
『サイバラバード・デイズ』(イアン・マクドナルド)!!!
今度は舞台がインドだぜ!(Sはただいまこちらを読んでますが、おすすめに外れなし。重力~のSF不足を感じた方は読むべし)
・ミステリとして
構成がうまい
ネロ・ウルフを持ってくるなんて作者はミステリ好きだろう
とのお声でした。粗探しをすれば色々出てくるけれど、それがミステリ!という名言もいただきました。
(「ミステリ」と「ミステリー」って違いはなに?という話題も。なんとなく本格や古典は伸ばさない、ドラマチックなのが伸ばすイメージ・・・。次回までに調べてお きます~)
そんなこんなで今回の課題本についての議論は終了となりました。
最後に皆様に伺ったのが、
次回の課題希望(①)、最近読んだおもしろ本(②)!
①「都市と都市」3票
「屍者の帝国」3票
「白熱光」2票
「重力の虹」2票
「侍女の物語」
「ドリフトグラス」
作品はどれでもいいので作家押しのジーン・ウルフ/マキャフリーも登場!
せっかくの読書会だから、あえてわかりにくいものを読み解きたいね、という意見が多く、それが納得できるセレクトでした。
さらに、SF好きなら理系ノンフィクションもいいのではとのご意見も。
②「さよならの手口」(若竹七海)
「B・D・T」(大沢在昌)
サザーン・リーチ三部作(「全滅領域」「監視機構」「世界受容」)
「うどん キツネつきの」(高山羽根子)
「ペドロ・パラモ」(フアン・ルルフォ)
「第四の館」(ラファティ)
「象られた力」「グラン・ヴァカンス」(飛浩隆)
「機龍警察」シリーズ(月村了衛)
「競売ナンバー49の叫び」「V.」(ピンチョン)
「氷」(アンナ・カヴァン)
「ポジティブシンキングの末裔」(木下古栗)
「火星の人」(アンディ・ウィアー)
他にも様々な本や映画、コミックがあがりましたが、筆記追いつかず・・・
こうして、読みたい本がまた増える、幸せ情報交換で本会は幕を閉じました。
最後に懇親会の様子を。
(ここでも一生読み尽くせないほどの本のタイトルがあがりましたが、私のメモには烏龍茶3、ビールなどのドリンクメモばかりが!なんたる失態!)
好きなジャンルは様々なれど、読書好き・翻訳好き(SF好きも多し)となると、初対面でも数時間が飛ぶように過ぎると実感の懇親会。
あちらこちらのテーブルから「インターステラーみた?」「ジェンダーSFは何がおすすめ?」「田中芳樹好きと伺いましたが!?」などなど同時進行的に様々な話題が繰り広げられていました。(平行宇宙か!)
Nさまご持参の「幻影城の時代」がテーブルに登場すると、あまりの執筆陣の豪華さに一同仰天といった場面も。
beco cafeさまのSF所蔵リストが素敵で、ふらりと棚を眺めてはこれこれとおすすめしあう姿も見られました。(幹事Tは「わが名はレジオン」「ロードマークス」をお買い上げ。私も気になります)
よく飲みよく食べよく語る、SF読書会懇親会でございました。
最後になりましたが、お越しくださった皆様、貴重なお時間をありがとうございました!次回の予定は未定ですが、決まり次第メールやTwitterにて告知いたします。
今回は参加を見合わせた方も、SFにたじろぐ方も、気楽な会ですので、ご興味ありましたらぜひ、次回お越しください。
以上、簡易レポでした!
1/24 西東京読書会SF支部 第二回読書会レポ①
- 1/24 西東京読書会SF支部第二回読書会 簡易レポ
こんばんは。前回のTさんの見事なレポクオリティを期待してご覧になっている方々、
先に謝っておきます。ごめんなさい。これを作っているのはズボラさに定評のあるSです。
さて、昨日は第二回のSF読書会をbeco cafe様にて開催でき、お越しくだっさ方々はもちろんのこと、陰日向にリツイートなどご協力いただいた多くの本好きの方々にも、篤く御礼申し上げます。
記憶の新しいうちに、出てきた意見やおすすめ本など、書き残しておきますので、よろしければ読書計画にお役立てくださいませ。
風吹きすさぶ西荻窪に、お越しいただいたのは総勢11名(幹事除く)。
今回の課題本は『重力が衰えるとき』(ジョージ・アレック・エフィンジャー/ハヤカワ文庫)。
第一回の読書会にて「著者近影がすごい」「そういえばもうすぐ復刊フェアだ!」ともりあがり、あれよあれよと決まった課題でございます(詳しくは第一回のレポをご覧ください)。
サイバーパンクSF・ミステリ・ハードボイルド・越境小説と様々な読み方ができる作品のためか、お集まりいただいた方々もジャンルミックス!
SF的猛者あり、ミステリ好きあり、歴史好き、なんでもいけますあり、読書のサラダボウルや!
まずは自己紹介がてら、感想を全員からいただく形でスタートいたしました。
(ちなみにBGMはN様にお借りしたボブ・ディランのアルバム。タイトル「重力が衰えるとき」はディランの歌詞からひっぱっていることに絡めて。)
- SFは星新一や眉村卓でとまってます。でもこれは楽しめた!
- 中東が舞台は珍しい
- 当時の時代性を感じる。刊行は87年、ベルリンの壁も崩壊していない情勢のころ、これほど饒舌に中東文化圏を書けるとは
- ボディ/ダディの設定が巧い(アニメや漫画のネタの原型にまで波及していた)
- 大学時代推研や文芸倶楽部で課題になった本(SF研だけじゃない)
- 浅倉久志さんの名訳が素晴らしい(「生まれてこのかたその噂を聞かされつづけて、せっかくここまでやってきたのに、見物もしないで故郷に帰れますか、というわけ。」などなど)
- 若い頃はかっこよく感じたマリード(主人公)が、今読むとへたれにみえる
- 正直、つまらない・・
- SFと思って読むと肩透かしをくらう
- 現代に読むと褪せてしまった部分もある
- 自分のバックグラウンドにない土地・文化を使ってここまで書くのはやはりすごい
- でもイスラムものなら「私の名は赤」(オルムン・ハンク)の方が意識に与える衝撃が強い
- 掴みがうまい。ジェームズ・ボンドの登場は笑うためではなく、その後の組間の対立、諜報機関の暗躍などを端的に感じさせるこれ以上ない比喩。
など、最初から様々な意見が飛び交いました。
そもそも、サイバーパンクとはなんぞや、という話にもなり、宇宙ものから舞台が街に降りてきた、反体制の香りがあるということや、意識変容がひとつ大きなテーマだという話も。
(ここで私がおすすめしたのが「楽園追放 rewired」です。ほんとうにおもしろいですから!)
モディ(着脱可能な別人格)のもたらす悲劇(暴走?)が、この作品のラストの加点となるか否かは意見の分かれる部分でしたが、マリードがモディを使用するまでの底知れぬ恐怖は、この作品をSFたらしめる重要なポイントだったのかと思います。
そんなこんなで約一時間がすぎ、いちど休憩へ。
つづけてアップしたいところですが、本業が彼岸から働けメッセージを送っている気がするので、本日はここまで。
次回皆さまからのおすすめ本を一挙ご紹介いたします。
仕事は仕事、遊びは遊び!
西東京読書会SF支部 第一回読書会レポート ②懇親会
続いて懇親会レポート。
二時間の本会も終了し、休憩を挟んでそのまま同会場で懇親会へ移ります。おいしいお料理とアルコールも。このあたりから、SF、ミステリー、ドラマ、映画なんでもあり。以下のような作品が話題になりました。
・キアヌ・リーヴス主演の「JM」は良きサイバーパンクの映像化。(ウィリアム・ギブスンの原作『記憶屋ジョニィ』は早川書房『クローム襲撃』に収録)。
・クローネンバーグ×SF。
・「ブレードランナー」はやはり外せない。
・「ガタカ」は美術・音楽共に素晴らしかった。SF映画は予算じゃない!
・「エンダーのゲーム」、原作(オースン・スコット・カード著、早川書房より同名で刊行)読んだ人~?
・今年の一冊を挙げるなら『帰ってきたヒトラー』上・下(ディムール・ヴェルメシュ 河出書房新社)。(「そうでもなかった」派も。)
・『図書館の魔法』(ジョー・ウォルトン 東京創元社)の大人気ぶり、納得ゆかぬ。
・ドラマ「ブレイキング・バッド」、クライムサスペンスだがとにかく脚本がいい。観るべし。
・「ブレイキング・バッド」とはある意味対極にありながら面白かったのがドラマ「ホームランド」。
・SFドラマ「オールモスト・ヒューマン」も良かった。
・映画と言えば『20世紀の幽霊たち』(ジョー・ヒル 小学館)。
・『月の部屋で会いましょう』(レイ・ヴクサヴィッチ 東京創元社)
・『領主館の花嫁たち』(クリスチアナ・ブランド 東京創元社)
・初心者ほど悲しくないSFを読んだ方がいいと思う。マキャフリーを読もう!
・チャイナ・ミエヴィルの『言語都市』、『クラーケン』上・下(いずれも早川書房)は難解だった。
・その他の難解作品
・スティーヴン・キング初心者は何から読めばいいの?
→やはり初期作品からでは。『キャリー』(新潮社)、『it』、『デッドゾーン』も。
・北欧ミステリー熱依然衰えず。『エリカ&パトリック』シリーズはいい。『特捜部Q』シリーズの人気も当然の面白さ。
・国内SF映画で意外な面白さを持っているのが「ブルー・クリスマス」。
・国内SFを語るならアニメや特撮を迂回することはできない。アニメで素晴らしかったのが「イデオン」、特に映画版。最近のものでは「まどかマギカ」。
・特撮なら「平成ガメラ」シリーズでしょう。
・国内SF作品では『火の鳥』(手塚治虫)、『百億の昼と千億の夜』(萩尾望都、光瀬龍)、小松左京作品に『2001年宇宙の旅』(アーサー・C・クラーク)との繋がりを感じる。
・小野不由美の『十二国記』シリーズはSFとして読んでもいい作品。
・映画「スターシップ・トゥルーパーズ」の1作目と3作目がいい。ハインライン激怒必至の無頼ぶりが絶妙。
(このあたり筆者の聞き違いがあり、後日発言者の方から「3はお勧めというより「おいおい茶化しと思ってたらマジですか!」の意」と伺いましたので追記訂正いたします。 2015.1.26)
・カート・ヴォネガット(・ジュニア)『ハイ・チーズ』(河出書房新社)『スローターハウス5』(早川書房)
・上田早夕里を読むなら『リリエンタールの末裔』(ハヤカワ文庫JA)と『魚船獣船』(光文社文庫)がいい。
・公開中の映画「アンダー・ザ・スキン」の、ミッシェル・フェイバーによる同名原作も良作。
・『火星年代記』(レイ・ブラッドベリ ハヤカワ文庫)『幼年期の終わり』(アーサー・C・クラーク ハヤカワ文庫)はやはり素晴らしい。
・『歌の翼に』(トマス・M・ディッシュ 国書刊行会)
・『残像』(ジョン・ヴァーリイ ハヤカワ文庫)
最後に、次回読書会の課題図書どうしましょう?:
・『火星の人』今一番熱い。
・『ダイヤモンド・エイジ』上・下(ニール・スティーヴンスン ハヤカワ文庫)残念ながら絶版。
・『あなたの人生の物語』(テッド・チャン ハヤカワ文庫)
・ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアのいずれかの作品
・『ブラインド・サイト』
・『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン ハヤカワ文庫)読みやすい古典を。
・『ニューロマンサー』(ウィリアム・ギブスン ハヤカワ文庫)サイバーパンク良いのでは。
・『虎よ、虎よ!』(アルフレッド・ベスター ハヤカワ文庫)
・『重力が衰えるとき』(ジョージ・アレック・エフィンジャー ハヤカワ文庫)
→近未来イスラム都市が舞台のサイバーパンクという設定がいい。しかも11月復刊予定とか、運命のタイミングでは!?
というわけで、次回SF部:2014年1月24日(土)、課題図書は『重力が衰えるとき』に決定しました。既にお申込みを頂いており残席わずかですが、興味を持たれた方はぜひお問い合わせください。
西東京読書会SF支部 第一回読書会レポート(ネタバレあり) ①本会
去る10月26日西荻窪のブックカフェにて西東京読書会SF支部第一回読書会が開催されました。参加者の皆様と会場カフェ様のお力で何とか開催にこぎつけ、また楽しい会となりました。途中いろいろな本のご推薦、映画や海外ドラマのお勧めなど話題豊富な会となりせっかくの情報が流れてしまうのが惜しく、不十分ではありますが当日の様子とともに上がった書名などをご覧頂ければと思います。なお、ネタバレありますのでご注意ください。
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まず幹事より今回の課題本を『ソラリスの陽のもとに』(早川書房)または『ソラリス』(国書刊行会)とした理由について。入手の容易さ、各種ベスト選に入る名著であること、2版が流通しており読み比べの楽しさもあること、映像化もなされておりイメージがつかみやすくSF入門としてふさわしいのではないかなどの理由で選びました。それにしても絶版本の多さに凹みました。
次に参加者の皆さんから自己紹介と本の感想、ご自身のSF体験などをお一人ずつ。何しろ第一回読書会なので他の読書会等で面識のある方々以外は初対面同士ですが、この時点で既に議論温まっておりました。
初読の印象:
「SF=地球外生命体との遭遇/対立/交流etc、というイメージを持っていたので(ソラリスの)哲学的なテーマに驚いた。」「ホラー小説かと思うほど、異常が起きたステーションの描写が怖い。」「地球的・人間的文明の基準を当てはめられない存在としてのソラリス。」「ソラリスは『エデン』『砂漠の惑星』と併せて3部作と言われているが、他2作は一般的なSFでソラリスだけ異色。」「異種生命体とは何かを問う小説。」「SFは読む方だがホラー・閉鎖空間ミステリーとしても読めた。最終的にソラリスが何なのかはあいまいなままだが、最後まで読ませる。SFとしては読み易い方ではないか。」「主人公ケルヴィンとハリーのトラウマストーリー。」「ステーション日記のような淡々とした記録的文章。」「テーマは認識論。ソラリス=他者のわからなさ。シュレーディンガーの猫と同じで、ソラリスは観測者によって異なった認識をされる。それを積み上げていくのがソラリス学。ソラリス=宇宙の未知なるもの=他者=恋人。」
ここが良い:
「異世界の異なる数学の下にある生命体とのディスコミュニケーション。でありながら相互理解を試みるところに感動がある。」「情景、光の描写。」「最後のスナウトの決断。スナウトにはスナウトの物語があったはずだと思わせる。」「地球と地球外生命体の関わり方は勝・負ける・交流する、ほぼこの3パターン。4つ目は?というところを描いたのがレムのソラリス。時代性を超越し哲学的にも読め恋愛小説としても読める、それによってオールタイムベストのSF小説なのだろう。」「科学的記述。自分の認識の整合性を実験するところ(早川版p78)。すごく良いシーンだと思う。予想・観察・結果という理系的発想の積み上げとしてのソラリス学が、結局恋人という小さな存在に矮小化されたような感じがしたのは残念。」
疑問点やこれはどうなの?という部分:
「話がどこへ向かっているのかわからないから読みにくい。」「主人公がソラリスへ向かう動機など、設定がはっきりせず入り込みにくい。」(「映画でははっきり描写があるよ~」との情報も。)「‘ザコパネ’‘ギバリャン’など地名や人名がなじみのない音なので戸惑う。」(ザコパネはポーランドの景勝地、ギバリャンは東欧系の人名のようですね。)「主人公が心理学者としたことに必然性はあるのか?」「先にテーマありきの小説で、その後舞台装置を整えたという実験小説的な作りでいまいち入り込めないところがある。」
恋愛小説として:
「ケルヴィン許せない。」(というご意見複数(>_<)。)「描かれているのはあくまで‘疑似恋愛’で恋愛ではないのでは。」「ケルヴィンが‘ハリー’を愛するようになったのはいつから?」「恋愛小説として読もうとすると‘ソラリス学’の部分に躓いてしまうが、後半のケルヴィンの一人称での語りは読ませる。」「全てがケルヴィンの投影なのだとしたら、ハリーが消えることもケルヴィンの望みなのか?」
早川版/国書刊行会版の違い:
両方を読まれた方から「‘ソラリス学’の部分をどう扱うかでかなり違いが出ている。心理描写に焦点を当てるなら早川版、ソラリスという生命体そのものに焦点を当てるなら国書刊行会版。」「国書刊行会版は色彩描写の美しさが感動的。」
映画化:
ソダーバーグ版について
→「ソラリスそのものというよりは自己探求と贖罪の物語。」「主題はコミュニケーション/ディスコミュニケーションでは。」「恋愛映画として観た。」
タルコフスキー版について
→「方向性は原作とはある意味反対。だが、あの映画としてしかあり得ない美しさがある。」「ソラリス学、ソラリスそのものにフォーカスしている。」「小説と映画の海の描写の違いに戸惑う。」「タルコフスキーはその後の作品でもソラリス的世界を追求し続けている。」「タルコフスキーのノスタルジアに対するソダーバーグの現実との地続き感。」
SF小説について:
「ミステリーは焦点を絞っていく小説、SFは広げていく小説。また、SFを読むにはある程度の知識が必要。」「神林長平などは国産SFの中でもレムに近いものを書く作家では。」
「SFにも文学寄りや科学寄りがあるが、ソラリスは文学寄りのSF。」「ソラリスのような思索型SFは初読には少し難しいかもしれない。」「ソラリスは惑星が襲ってくるタイプのSFの一つでもある。科学SFを読むコツは、数式などの部分は飛ばして読んでも大丈夫、ということ。」
「これ面白かった」「ぜひ読んで」というお勧め:
・『星を継ぐもの』(J・P・ホーガン 東京創元社)
・上田早夕里はいい!
・『継ぐのはだれか』(小松左京 ハルキ文庫、または『小松左京コレクション(2)』(ジャストシステム)にも収録。)
・『ブラインド・サイト』上・下(ピーター・ワッツ 東京創元社)テーマにソラリスと通じるものがある。
・『火星の人』(アンディ・ウィアー 早川書房)今年一番読者の反応が熱いSFでは。国内SF人気作家の小川一水さんが推しており、本国アメリカで電子書籍として人気が出て、その後紙媒体へという経緯も興味深い。
・『都市と都市』(チャイナ・ミエヴィル 早川書房)。ミエヴィルは著者近影も必見。
・伊藤 計劃。『虐殺器官』『ハーモニー』(共に早川書房)。「メタルギア・ソリッド」のノベライズも良い。
・重厚さだけがレムの持ち味ではなく、他の作品にも趣が違って面白いものがある。『捜査』(早川書房)、『枯草熱』(サンリオSF文庫 または スタニスワフ・レムコレクション 国書刊行会)など。
・『地球が淋しいその理由』(六冬和生 早川書房)も今来てる作品。
・『ミレアの島』(柴田勝家 早川書房より11月の刊行予定)、南洋舞台の文化人類学SFという異色。作者が本気で‘柴田勝家’をやっているのもすごい。
・小川一水『天冥の標』シリーズ(早川書房)は長編大河の名作。同作者の邪馬台国タイムスリップもの『時砂の王国』(早川書房)、こちらもおすすめ。